DVと親
- 2009.06.23 Tuesday
- 09:47
今日は、親について書きたいと思います
彼は、自分がDV加害者になったのは、両親からの影響と、最初に勤めた会社のパワーハラスメントのせいであり、自分も被害者であり、DVは仕方のないことだった・・・と、主張した時期がありました
彼が抱いていたお父さんのイメージは「恐い威厳のある人」で、お母さんは「余計なことを話して不快にさせてはいけない、心配をかけてはいけない」という存在だったそうです
「迷惑をかけない存在でいなければ、家を追い出されるんじゃないかという不安がいつもあった」
「学校で辛いことがあっても話せなかった。それくらい何だ!って、叱られるんじゃないかと思ったから」
「両親が喧嘩しても、テレビとか見て聞こえないフリをしている子供だった。嫌なことからは逃げるしかなかった」
「反抗期は、両親と向き合うのが嫌で、友達の家を泊まり歩いて避けていた」
彼は、学校で遭ったいじめのことを誰にも相談できず、その時学習したそうです。
「自分を出すと、叩かれる、いじめに遭う。だったら、自分を演出して、いい自分だけを見せていればいいって、思ったんだ」
そして、今度はいじめられるのが嫌で、いじめる側へ回ってしまったそうです。その時、
「すごく自分が嫌いだった。惨めで卑怯で情けなくて・・・自分が大嫌いになった」
そうです。
彼が最初に勤めた会社は、社長がワンマンで、とにかく厳しくいつも怒鳴られていたそうです
どんどん社員が社長と衝突し、仕事を放り出して辞めていく中、新人の身で責任ある仕事をこなしていかなくてはならず、毎日が必死だったそうです。
顧客から見れば、中途半端に仕事を放り出して辞めた社員の後任ですから、前任者の分も要求が厳しくなりますし、色々と文句も出ます。
「会社では社長に怒られ、お客さんにも怒鳴られて。物を投げつけてくる人もいた。それくらい無責任なことを強要している会社だったから、お客さんが怒るのも無理なかったんだろうけど。何で俺ばっかりって。仕方ないじゃん、どうすればいいんだよって、どんどん腐っていったよ」
「会社で頼りになるはずの上司はどんどん辞めて、相談する人もいないし。友達には言っても仕方ないと思っていたし。そんなこと話して、情けないとか思われて嫌われるのも嫌だったし。自分で何とかしていくしかないって、諦めてた。毎日がその繰り返しだったからさ、働くってこういうことなんだな・・・って、それが当たり前だと思うようになったんだ」
彼にとって、ストレス発散は、アウトドアの趣味でした。
アウトドアに熱中している時は、すべてを忘れて楽しめたそうです
私が初めて、会社の内情を話した相手だったそうです。
正確には、「話せた」相手でしょうか。
彼の今までには、とても心が痛みます
初めて聞いた時は、DVする彼が悪いのではなく、彼をそうさせてしまった環境や社会が悪いのだと思ってしまったくらい、ショックを受けました。
それでも、DVを繰り返す彼と過ごすうちに、それだけではないと気付きました
彼は、自分の心の傷を武器にしていました。
「俺も被害者なんだから、お前は俺のすべてを受け入れて癒して尽くして支えて、俺のためだけに生きなくてはいけないんだ、それがお前の存在意義で、価値なんだ」
そして、強くそう信じていました。
私は、彼の気持ちに寄り添うことはできても、彼の代わりにはなれません。
彼が自分で心の傷に向き合わなくては、「俺は被害者、かわいそうな俺」という自分から抜け出ることができないでしょう。
そして、彼がそういう自分に酔いしれて甘えている限り、DVはなくならないと確信しています。
私は、そういう彼といることで、大きなことに気付きました。
「そうか・・・私も、DV被害者であるということにこだわり、負の感情にいつまでも溺れていると、彼のようになってしまうのだ・・・」
私は、彼のおかげで、DVの経験から学んだことを前向きに生かしていこうと考えられるようになりました
親の影響が大きいことは、確かです
私は、自営業の両親に育てられ、大家族にもまれて育ちました。
兄弟も多く、長女でしたから、母親代わりになることもありました。
父の着替えを手伝ったり、風呂の支度まで用意する母を見て育ちました。
成人した男兄弟の食事の世話をすることは、姉として当然という中で育ちました。
家事・炊事の手伝いは、女の子
力仕事は、男の子
母にはいつも、
「男の人はいくつになっても子供だから、こっちがフォローしてあげなくちゃね。まあ、手伝いとか気遣いとかは、男に求めないのが一番よ。自分で何でもやって、頼りにしない。最初からアテにしなけりゃ腹も立たないし」
と、言われました。父にはいつも、
「女は愛嬌と、賢さだ。気配り、気遣い、察して動くのが大事だ。旦那よりも子供を優先するなんてことは、言語道断!夫婦が仲良くあるためには、妻が旦那をうまくおだてて、機嫌よく掌に転がしてやるのが一番だ」
と、言われました。
私が、DV被害に遭っていると話した時。両親の反応は、鈍かったです。
母には、やり返せと言われました
父には、気にするほうが悪いと言われました
今でもDVについては、理解があまりありません。DVについて話しても、右から左へ流されているのを感じます。
子供がどういう目に遭っているのか直視したくないのか、認めたくないのか、他の兄弟のこともあるから、私一人に構っていられないのか。
色々考え、悩みました。
で、思い至ったのは、DVが嫌いなのでしょう、両親は。
父親は、DVはされる方も問題があると考えていますし、殴られていない私が何故DV被害者なのかも理解できないのです。
母親は、DVは結局男女愛情のもつれと考えていて、他人の入る領域ではないと受け止めています。また、やり返さない私に苛立ちを感じています。
「武道も段もちのアンタが、何でやり返さないの?」
と、言われたことがあります。
私が武道をたしなんでいたことは、彼も知っています。
私がいじめようとした男子に回し蹴りをくらわし、やっつけた話も親戚から、彼は聞いていました。
また、男所帯で育った私が男性の怒鳴り声や喧嘩に慣れていたこと。
殴られればやり返す、もしくは、すぐに別居を決意する人だということも、見抜いていたそうです。
だから、彼は、身体的暴力を使いませんでした。
DVとは、選ぶ暴力でもあるのです
残念ながら、彼が怒鳴り散らすDVを使うようになった時は、私は精神的病により、結婚前の私ではなくなっていました。
大声に腰を抜かし、大きな音に涙を流し、這い蹲って逃げ回る状態になっていました。
私がそうなるのを見越してから、彼は、怒鳴るようになったのです
身体的暴力をされるDV被害者の方が、やり返せない、逃げられないのは、その方が悪いのではありません。
そこまで、既に追い詰められて、囚われているのです。
その過程を知らない人が、非難するのは・・・あまりにも残酷です。
長い年月をかけて、ジワジワと魂を殺されて抵抗できなくされているのに。
犯罪は、やる方が悪いのに、誰かが言い出すのです。
やられる方も悪い、と。
両親は、DVについては理解不足でありますが、それでも私の子供のことを可愛がり、心穏やかに過ごせるようにいつでも助けてくれます
今では、私自身のことは求めず、孫である子供を助ける気持ちがあるだけで有難いと思うようになりました
親は親の考えがあるのでしょう。
私は、私の考えで、DVについてきちんと学び、理解を広めていきたいと思うのです