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    麒麟館グラフィティーを読みました DV被害を乗り越えた方々

    • 2010.07.06 Tuesday
    • 12:47
    評価:
    吉村 明美
    小学館
    ¥ 590
    (1995-10)
    コメント:切ないという言葉では、片付けられない、沢山のことが詰まった作品でした。

    コメントを寄せて下さった方が、勧めて下さった、

    「麒麟館グラフィティー」
    (吉村明美、小学館文庫、1996年、1巻から8巻)

    を読みました
    漫画をじっくり読んだのは、久し振りでした

    物語は、麒麟館という下宿屋の管理人になった、森川妙(もりかわたえ)さんが、雪の中倒れている女性を助けるところから始まります
    倒れていた女性は、宇佐美菊子(うさみきくこ)さん。
    何と、妙(敬称略します)が、熱烈片思いをしていた、先輩の奥さんだったのです
    高熱を出して寝込んでいた菊子は快復すると。
    倒れていた理由は喧嘩をして家を飛び出したからだ、帰りたくないからここに居させてくれ・・・と言い出します。
    それを聞いた妙は、
    「何で、あんな素敵な人の奥さんなのに、そんなことを
    と、信じられません
    先輩に迎えに来てもらおうと、妙は、菊子の夫であり、自分が恋焦がれていた相手でもある、宇佐美秀次(うさみひでつぐ)さんを訪ねます。
    好きだった頃と変わらず、秀次は、二枚目で、クールで、聡明で、言うことナシの男ぶりだったわけですが
    菊子に対して、出てきた言葉が、
    「ちゃんと、しつけてきたつもりなんですがね」
    妙が、カチンと、きます。
    妙が抗議をすると、
    「菊子は、ぼくが見つけてぼくが育てた、ぼくの妻です。どう扱おうが、勝手でしょうが」
    と、秀次は突き放します。
    「どこを気に入って、結婚したんですか?」
    怒りで身体を震わせながら、尋ねる妙に、秀次は言います。
    「類まれな純粋さと、従順さ」
    その言葉を聞き、妙は、菊子を麒麟館に住まわせることを心に決めます
    そして、麒麟館に帰り、菊子に言います。
    「あんたのだんなは、ひどいわ。自分にだけ都合のいい「妻」って人形にあんたを押し込めといて。生身のあんたを切り捨てようとしてるんだもの。従順さが気に入ったから結婚したなんて、人間が人間に言うことばじゃないわ」
    菊子は、初めて、自分を理解してくれる「誰か」を見つけたのです

    物語は、妙と菊子の友情物語というだけでなく。
    麒麟館の住人の成長物語でもあり。
    秀次を介しての、妙と菊子の試練の物語でもあります
    一番、試練が課せられるのは、もしかしたら、秀次かも知れませんが。
    彼は、大いにラッキーでした
    彼を愛する女性が、二人もいて
    その二人に導かれて、自分の過ちを認め、改心する道を見つけることが出来たからです
    でも、そのために、妙や菊子が払った犠牲や、心身の傷は、相当深く・・・辛苦を伴うものでした
    二人だからこそ、出来たことで・・・多分、一人では無理だったと思います

    何度読み返しても、
    「よく・・・この人、改心したよな・・・」
    と、不思議でならない人物が、秀次です
    彼の言葉を紹介するだけでも、フラッシュバックが起きそうです
    心を通い合わせたいと、望む菊子に、
    「好きだの愛してるだのごめんだね。くだらない」
    と、言い放ち。
    「夫が外でバリバリ働いている。それを見て幸福だと思うのが、妻のつとめだ」
    「やすらぎを他人に求めるな。幸福にしてもらおうなんて、虫のいい女は嫌いだ」
    と、突き放す
    菊子が風邪で具合が悪くなれば、
    「病気になるのは本人の不注意だ。その不注意のしわ寄せを夫がくういわれはない。家事をやるのは、妻のつとめだろうが。辛気くさい顔で、これ見よがしにウロウロされたんじゃこっちが迷惑だ!」
    と、怒り
    「頼みもしないことを勝手にやっておいて、相手に見返りを求めようってのかい、君は」
    「外で仕事して帰ってきた上に、女房にまでご機嫌とりりしろってのかい、君は!」
    あげくの果てには、
    「口ごたえはするな!」
    「僕が右を向けと言えば右!左と言えば左だ!!」
    と、平手打ちを喰らわす始末
    そもそも、菊子と何故結婚したのか?と問われれば、
    「一生ただで使える便利な女」
    が、欲しかったから。
    「結婚するなら、バカな女がいちばんさ。自分を卑下して、自信なんかかけらもないような女がな。まちがっても、対等だなんて思わせないためさ。対等であってもらったりしちゃ、邪魔なだけなんだよ。尽くすだけ尽くさせても、こちらが気をつかってやる必要の全くない女。それでいて、夫に犠牲的な女でないとな」
    菊子が、籠の鳥はもう嫌だ、私を解放して欲しいと望めば、
    「自分より下の人間に楯突かれるのは、大嫌いだ」
    と、憎悪むき出しで怒る

    が、秀次は、妙と向き合うことで、心に何かを芽生えさせていきます
    菊子を守る妙。
    そして、自分が愛した男が、こんなひどい奴なままじゃない・・・と、何処かで信じようとする妙の思いが、少しずつ少しずつ、秀次の心の氷を溶かしていきます。
    そして、妙への気持ちを誤魔化し、むしろ妙を踏みにじることでそれをかき消そうとする秀次に、菊子は、挑みます
    何度も、何度も、それでいいのか?と、挑みます。
    そして、菊子自身を「モノ」ではなく、「人間」として見てもらうことを求めます。
    何度も、何度も、「私は人間ですよ」と、求めます。
    そんな二人を・・・麒麟館の仲間が支え、励まし、受け容れてくれたからこそ、続けられたことでもあるのですが(その中には、菊子をずっと愛し続ける青年もおります
    妙の叫びに、妙と菊子の思いは、集約されていると思います
    「信じたかったからよ!罠でもウソでも、最後の最後の髪の毛一本分の、もしかしたらを信じたかったからよ!」

    菊子の気持ちは、物凄くよく分かりました
    どんなに心を尽くして言葉にしても、テレビの向こう側のように、相手に届かない。
    響かない。
    菊子は、妙に言います。
    「わたしじゃ、だめなんです・・・わたしの声では、あの人には届かない」
    泣きながら、妙に、何とかして欲しい、秀次に言葉を掛けて欲しいと、願います。
    そうしながらも、妙のいないところで、
    「わたしがどんなに努力しても、秀次さんを変えられなかったのは、私が秀次さんにとっての「本物」じゃなかったからなんだ・・・って、そんなふうに、愛してもらえなかった理由が見えてきてしまうのは・・・」
    悲しい・・・と、涙も流さずに、耐えようとします。
    分かる、分かるなあ・・・と、思いました
    DV関係にハマってしまうと、対等であることを許してもらえなくなるので、どんなに言葉を尽くそうが、努力しようが、のれんに腕押し・・・馬耳東風・・・。
    ブラックホールにすべての思いが飲み込まれていくだけで、何も届かないんですよね。
    むしろ、相手の怒りを買うだけ。
    秀次の言葉に、こんな台詞もありました。
    「やすらぎなんて、他人から与えてもらうもんじゃないだろうが!むしろそれを作って、夫に差し出すのが妻のつとめじゃないか!!」
    菊子は、思います。
    「与えてもらおうとか、ご機嫌とりをしろとか、そんなこと考えてたわけじゃないんです。
    ただ・・・寂しくて・・・。
    二人で歩いていくんでしょう?
    そうでしょう?
    もっと秀次さんを知りたいんです。
    もっと私を知って欲しいんです。
    もっと・・・もっと愛したいんです。
    どうやったら愛せるんですか?
    どうやったら心に手が届くんですか?」
    これは、抱いて当り前の思いです。
    でも。
    「妻という名の人形」には必要がない、むしろ抱いてはいけない思いなのです

    菊子は、二次被害も、受けます
    世間では、菊子を「不満だらけでワガママな、自分勝手な家出妻」といい。
    秀次を「奥さんのワガママを許して、信じて待つ、健気な夫」といいます。
    DV被害者が、どうして二次被害に遭うのか・・・そのことも、この物語は教えてくれます
    でも、きちんと理解して下さる方も、きっといらっしゃることも教えてくれます

    さる様、素敵な物語を教えて下さり、ありがとうございました
    妙さんと菊子さんに出会えたことは、大きな喜びでした

    今日も、読んで下さりありがとうございます
    明日は、七夕ですね
    皆様の願いが、叶いますように、心からお祈り申し上げます
    くれぐれも暑さにお気をつけて下さいね
    ありがとうございました








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      コメント
      >ミント様、コメントどうもありがとうございます!

      ミントさんのご感想が、簡潔明瞭で拍手してしまいました。
      マンガは最終回をむかえていますが、彼の人生は続いていて、さらに反省して、社会に対しても自分の過ちを話すことができる人間に成長しているといいですね・・・。
      とても難しいことだとは思いますが・・・。

      まだまだ寒い日が続いていますね。
      くれぐれも心身ご自愛下さいね。
      またいつでもコメントして下さいね。
      ありがとうございました。
      • >つくしんぼ
      • 2014/02/16 10:54 PM
      始めまして
      ミントです。
      離婚には応じた
      でも、自分の悪行は言わずじまい
      菊子さんに関して言い降らした酷いデマを取り消したのか
      本当の事言えないですよね
      そうなれば自分は御終いですものね。
      最後までズルい人ですよ。
      • ミント
      • 2014/02/16 1:20 PM
      >麒麟館グラフティーの検索から、来て下さりありがとうございます。

      読んで下さり、どうもありがとうございます。
      コメントも、ありがとうございます!

      TAは、私は初めて知りました(恥ずかしながら・・・)が、少しだけ調べてみて、分析して理解したい、何とかしたいと思われるお気持ち、分かる気が致しました。
      モラハラ思考に走る相手って、謎だらけですものね(^^;

      どんな働きかけだろうと、「そうしたい」と心が叫ぶものであったら、やっていいと思います。
      相手の気持ちに届くかどうかは、物凄く気になると思いますが・・・それよりも、「私がそうしたい」という思いを果たすことって、一番心の健康にいいと思うのです。

      どうか、ご自分の心身をくれぐれもお大事になさって下さいね。
      いつでも、コメントして下さいね。
      ありがとうございます。
      • >つくしんぼ
      • 2010/07/23 9:33 PM
      麒麟館グラフィティーの検索からきました。
      出たばかりの頃に全巻読んで、『酷い男がいるもんだ』と思いながら、現在の自分の夫が秀次に近いモラ男という、、、(読んでた頃からの付き合いですが、社会人になってから年々モラ度が高まってるような・・・)

      幸い、夫もA級ではなくB〜C級のモラ度で、私は妙に近い性格なので、なんとか大喧嘩しつつも楽しく?暮らしています。。。でも説教が始まると時々『刺しちゃおうかな・・・』と思ってしまう自分が現れるので、、、息子(現在1歳3カ月)にこれから悪影響を及ぼさない対策をとらなければと、、、考えたりもします。。。

      人間の心の形成には幼少期の環境の影響が大きいというのを知って、旦那もある意味被害者だという思いと普段は世話になっているという思いがあるので、別れるという結論には至らないと思うのですが、、、

      以前TAという心理学を学んだ経験から、どうしてこういうモラハラ思考回路になるんだろうか?という興味と、悪を成敗したいという正義感が・・・関係を持続させているのかもしれません。。。

      とりあえず、冷静な時に該当するモラハラの特徴をプリントアウトしておいて、『あなたはこういう悪い傾向にある』という自覚を促そうかと思っています、、、活字にすると恥ずかしいかなと思って・・・無駄でしょうか?

      突然のコメント失礼しましたm(--)m
      • 2010/07/23 3:07 AM
      >arisa様、コメントをどうもありがとうございます!

      arisaさんも読んで下さっていた、しかも連載当時からの吉村明美さんファンだったとは、嬉しいです!!
      恥ずかしながら、私はこの年で「麒麟館グラフィティ」を読み、「すげー!!吉村明美さん!!」と、改めて感激しております。

      私は、DV被害を知らない私のままだったら、妙のみに、感情移入していた気がします。
      菊子に心惹かれる今の私でいられて、良かったなあと思いました。
      でなければ、この作品の良さをこれ程までに、堪能出来なかったかも知れませんし。

      お互いを対等な立場で、人間として思いやり、絆を築こうとすれば、きっと「尊敬」や「謙虚」や「信頼」は、自ずと生まれて育つものなんですよね。
      私自身、感覚として、そういうことを消去しかけている危機感を感じます。
      だからこそ、arisaさんの、取り戻そう、見習おうと諦めない姿勢に、とても心打たれます。
      私も、自分の感覚を諦めずに生きていきますね。

      arisaさん、どうかくれぐれもご自愛下さいね。
      いつも勇気をありがとうございます。
      • >つくしんぼ
      • 2010/07/07 10:01 AM
      >さる様、コメントをどうもありがとうございます!

      とても素敵な本を教えて下さり、どうもありがとうございました!(^o^)
      私も、強くて優しい人間でありながらも、弱さや醜い部分と向き合い、何とかそれらを美しいものへ浄化させようという葛藤を抱えている、菊子を尊敬します。
      そして、強くて優しい人間であろうと望み、弱さや醜い部分を抱え込みながらも、何とか前へ高みへと突っ走る、妙も尊敬します。
      二人の女性を通して、沢山の勇気が広がるといいなあと思いました。

      秀次そのもののイメージは、確かに、一昔前でありますが・・・。
      未だ、大なり小なり、似たような夫婦観を持っている方々は、多いかも知れませんね。
      夫婦だけでなく、デートDVという問題が持ち上がっているように、恋愛の関係に対してのイメージにも、未だ根強く反映されているのではないか?と感じます。
      ですから、こういう作品が、多くの方に読まれて、DVを知らない方にも、DVだと気付いていない方にも、「対等な関係の大切さ」を理解して頂けることを・・・心から願っております。

      さるさん、本当にありがとうございました。
      暑い日が続いておりますので、くれぐれも心身お大事になさって下さいね。


      • >つくしんぼ
      • 2010/07/07 9:51 AM
      >こぶ様、コメントをどうもありがとうございます!

      菊子さんを人間として認知することが出来た秀次さんは、菊子さんを解放します。
      良かったねえ、人間だって分かってもらえて!と、涙ぐんでしまう場面でした。
      相手を「人間」として愛すると、とても相手を尊重した接し方が出来るようになるのですよね。
      「モノ」として愛していた時には、考えられないことなのでしょうけれども。

      こぶさんの心の痛み、よく分かります。
      切ないし、何とかならなかったのかなあ・・・と、グルグル考えてしまいますよね。
      ずっと一緒にいたお相手で、身内だった方ですもの。
      そういう思いがあって、当然ですよ・・・。
      泣いていいのです。
      泣けて当り前です(>_<)

      それでも、こぶさんが、十分本当に頑張って頑張って頑張ったことは、確かなことなので。
      どうか、ご自分を責め過ぎないで下さいね(;_;)
      くれぐれも、こぶさんの心身をご自愛下さいね。
      • >つくしんぼ
      • 2010/07/07 9:34 AM
      いやー。
      ここで麒麟館グラフティーの話が出てくるとは思わず、ビックリしました。
      私は、麒麟館連載当時から吉村明美さんのファンで、
      今回のつくしんぼさんの記事で改めて『あれはDVの話だった』と気がついたオマヌケものでございます(^^ゞ
      吉村明美さんは他にも『家族問題』をテーマに多く取り上げていらっしゃいますよね。(『薔薇のために』とか)
      私はさるさんとは逆で、当初は徐々に立ち上がっていく菊子の力強さに惹かれて読んでいました。『支配的母からの脱出』が当時の私のテーマでしたから。

      DVで精神的に病んでしまった今となっては、妙の『狙った獲物は逃がさないわよー』的な精神的タフさを見習いたい。と思うと同時に『支配する』『支配される』といった関係性からの解放(スパイラルからの脱出)を望んでいます。
      最後は妙が秀次を振りまわすようになりますが、その根底には、妙は『支配』という言葉のない世界の思考・認知感があって、いい意味での自己主張ができる人物であるからこそと思うからです。
      一昔前の女性の『男性を立てながら自分も曲がらない』したたかさ・知性も見習いたい所のひとつですね。
      • arisa
      • 2010/07/06 11:54 PM
      麒麟館、気に入っていただけて嬉しいです。
      吉村明美さんの本は、コンプレックスを抱きながらも前向きに向かっていく話が多いので、読んでいて身につまされたり、ためになったり考えさせられたりします。私は最初読んだ時はどちらかといえば自由奔放な妙が好きで、菊子は周りに守られていてか弱いイメージを持ってましたが、何度も読み返すうちに内に秘めた菊子の強さに気づきました。誰に対しても優しく穏やかでいられること、冷静に語れることというのは、強さの証だと思います。その点、秀次は弱さを見せまくってますね。でも一昔前の人は、こういう人が多い気がします。この物語はとても強い女性の物語なので、被害にあった方にも読んで元気を出してもらいたいです。
      • さる
      • 2010/07/06 10:49 PM
      私も読んでみたいです!
      でも・・・・。
      やっぱりつくしんぼさんがご紹介下さっている
      セリフだけでも、けっこうキツいですね。
      ほんと、菊子の気持ちは
      私の気持ちそのものです。
      離婚してもこんなに未練タラタラで・・・・。

      二人の女性に導かれて
      改心できた旦那さんは、本当にラッキーですね。
      マンガとはいえ
      なんて羨ましいのでしょうか。
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